技能実習から特定技能へ!

技能実習から特定技能へ!

2022年6月21日

こんにちは。特定技能を専門とする行政書士の長井です。
今回も特定技能制度について、ご理解が進むよう簡潔に解説していきますので、最後までご一読いただけましたら幸いです。

これまで技能実習生を受け入れていた企業の中には、技能実習2号の終了のタイミング、本人の意向、および実習中の評価を考慮し、現在受け入れている技能実習生を特定技能に移行させようと検討している場合が多いことでしょう。

そこで、この記事では、技能実習から特定技能への移行プロセスについて、詳しく解説します。

1、特定産業分野該当性

まずは、全ての職種において技能実習から特定技能に移行できるというわけではありません。

●介護
●ビルクリーニング
●素形材産業
●産業機械製造業
●電気・電子情報関連産業
●建設業
●造船・舶用業
●自動車整備業
●航空業
●宿泊業
●農業
●漁業
●飲食料品製造業
●外食業

上記の職種に該当していれば特定技能1号への移行が検討されます。

2、業務区分該当性

特定技能における『業務区分該当性』とは、具体的に従事させる仕事内容のことを指します。特定技能では、各職種に対して「許可される業務」と「禁止される業務」が細かく定義されています。

たとえわずかな違いであっても、「それなら大丈夫だろう」と安易に判断して在留資格を取得し、その特定技能外国人を働かせ続けると、企業は不法就労助長罪に問われるリスクがあります。

したがって、特定技能外国人を雇用する際には、雇用者が「不法就労助長罪」について十分に理解しておくことが必要です。詳細は下記の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。

不法就労助長罪イメージ画像

特定技能外国人に従事させる仕事内容、いわゆる「業務区分」は、非常に細かく定められています。どのような業務区分が存在するかを知るためには、特定技能外国人が受ける必要がある技能試験を参考にするのが一般的です。

例えば、介護分野では施設介護のみが対象、農業では耕種農業と畜産農業、宿泊業では通常の日本人従業員が行う業務全般、自動車整備業では日常点検や定期点検、分解整備などが挙げられます。

特に「建設業」、「素形材産業分野」、「電気電子情報関連」などの分野では業務区分が非常に細分化されています。特定技能への移行後には、原則として許可された業務以外に従事させることは避ける必要があります。

3、受入機関適合性

「特定技能受入機関適合性」とは、特定技能外国人を雇用する企業が受入基準を満たしているかを確認する要件です。技能実習と異なり、特定技能では管理団体の介入がなく、企業自身が直接判断を行います。これには、適切な監督体制の欠如が企業に大きな責任を課すことを意味します。受入企業が満たすべき具体的な要件は以下の通りです:

  1. 過去2年間に中長期在留者の雇用経験があるか。ただし、文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在、永住者等は対象外。
  2. 中長期在留者雇用経験がある場合、支援責任者を任命できるか。常勤でなくてもよいが、支援担当者を監督する立場であり、直属の上司ではないこと。
  3. 労働保険、社会保険、税金の適正な支払いが行われているか。未納があっても後で納付すれば法令遵守と見なされる。
  4. 過去1年間に非自発的離職者を発生させていないか。これには、同種の業務を行う日本人フルタイム労働者も含む。
  5. 過去1年以内に外国人の行方不明者を発生させていないか。
  6. 過去5年以内に重要な刑罰を受けていないか。
  7. 過去5年以内に技能実習の取消しを受けていないか。
  8. 行為能力や適格性に問題がないか。これには、破産手続き開始決定を受けていないことや、認知症等による判断能力の問題がないことなどが含まれる。
  9. 直前期が債務超過状態になっていないか。設立後初めての決算期を終了していない場合は設立時の貸借対照表が必要。

これらの基準は、特定技能外国人の受け入れを考える企業にとって非常に重要です。適合性が確認されない場合、企業は外国人を雇用する資格を失う可能性があります。

4、特定技能1号技能試験受験の必要性

技能実習を終了して特定技能に移行する場合で引き続き同じ業務に従事させるのであれば無試験で移行が可能。違う業務に従事させる場合には、その対象となる試験の合格が必要。

5、申請人(技能実習生)の要件

●18歳以上であり健康状態が良好であること。(健康診断の受診が必要)

●有効なパスポートを持っていること。

●業種特有の要件に適合すること。

●有効なパスポートを持っていること。

●個人住民税を納付しているか。(源泉徴収票、課税証明書及び納税証明書で確認されます。)

●在留資格に応じた活動を行っていたか。(例えば、失踪した技能実習生や、除籍・退学後も在留を継続していた留学生などはマイナス要素となる)

●素行が不良でないか。(退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為などのこと。)

●入管法に定める届出等の義務を履行しているか。

6、特定技能雇用契約適合性

「特定技能受入機関適合性」という用語をわかりやすく説明すると、これは特定技能外国人と企業間で適正な雇用契約が締結されているかどうかを示すものです。これは、技能実習からの移行に限らず、新たに外国から呼び寄せる場合や、留学生を特定技能として雇用する場合にも必要な手続きです。

雇用契約の締結に際しては、企業が特定技能外国人を適切に支援し、法的な要件を満たす必要があります。これには、適切な労働条件の提供、必要な保険への加入、税金の適正な支払いなど、さまざまな側面が含まれます。また、企業は特定技能外国人の福祉を保護し、彼らが日本での生活に適応できるように支援する責任も負います。

このプロセスを通じて、特定技能外国人が日本で安全かつ公正な労働環境で働けるようにすることが目的です。このような適正な雇用契約の締結が求められるのは、単に法的な要件を満たすためだけでなく、外国人労働者の権利と福祉を保護するためでもあります。

  • 労働時間は通常の労働者の所定労働時間と同じである
  • 日本人と同等以上の報酬額を設定している
  • 一時帰国を希望した際は必要な有給休暇を取得させてころができる
  • 本人が帰国旅費を負担できない場合には補助できる
  • 定期健康診断を受診させることができる
  • 報酬支払は口座振込で行うことができる
  • 保証金の徴収や違約金契約の締結がない
  • 支援に要する費用負担をさせないことを説明することができる

まとめ

多くの企業では、すでに自社で雇用している技能実習生が引き続き働いてもらえるよう特定技能への移行を検討しています。移行がスムーズに進むケースもあれば、残念ながら特定技能の資格を取得できないケースもあります。

この記事が、特定技能外国人の雇用に関する理解を深める一助となれば幸いです。何か他にも質問があれば、ぜひお知らせください。