2024年から自動車運送業分野でも特定技能制度による外国人ドライバーの受入れが始まり、トラック・バス・タクシー事業者の間で関心が高まっています。しかし実際の採用現場では、「どの国の人材が来るのか」「運転経験はあるのか」「安全意識は問題ないのか」といった人物像が見えにくく、受入れ判断に迷うケースも少なくありません。本記事では、特定技能(自動車運送業分野)で受け入れる外国人材の基本像について、実務上の判断に役立つ視点から整理します。
目次
特定技能(自動車運送業分野)で想定される外国人材の基本像
特定技能1号で受け入れる外国人材は、技能評価試験に合格していることから、分野で働くために必要な基礎知識を有する人材として位置づけられています。ただし、自動車運送業においては「試験合格=現場配置可能」という意味ではありません。とくに次の点は出身国によって差が生じやすく、採用時に理解しておくことが重要です。
- 交通環境の違い
- 運転文化の違い
- 安全優先の考え方
- 業務運転に対する責任意識
制度上の技能水準と実務適応力は別のものとして整理しておく必要があります。
特定技能外国人ドライバーの主な出身国
特定技能(自動車運送業分野)で就労を希望する外国人材は、アジア諸国出身者が中心になります。代表的な対象国としては次の国が挙げられます。
- インドネシア
- ミャンマー
- フィリピン
- ネパール
- バングラデシュ
- カンボジア
- モンゴル
- スリランカ など
とくに自動車運送業分野では、スリランカからの関心が比較的高い傾向があります。また対象となる外国人材には海外在住者だけでなく日本国内在留者も含まれますが、海外から新たに受け入れる場合には技能評価試験が実施されている国かどうかが実務上の重要な判断要素になります。
性別構成は男性中心だが今後は変化の可能性もある
自動車運送業分野の応募者は、日本と同様に男性が中心です。これはトラック・バス運転が世界的に男性比率の高い職種であることや、長時間運転や荷役作業を伴う業務内容が背景にあります。一方でタクシー分野では女性ドライバーの活躍が広がっており、日本国内でも女性採用に積極的な事業者が増えていることから、今後は外国人女性ドライバーの応募が見られる可能性もあります。
年齢層は20代後半を中心とした若年層が主体
特定技能(自動車運送業分野)で来日する外国人材は20歳前半から35歳程度までが中心で、とくに20代後半の層が多く見られます。日本の運送業界ではドライバーの高齢化が進んでいるため、こうした若年層の参入は人手不足対策だけでなく年齢構成の改善という意味でも重要です。
一方で若年層中心という特徴から、採用時には次の点も理解しておく必要があります。
- 社会人経験が十分でない場合がある
- 日本の業務文化に慣れていない場合がある
- 給与だけでなく生活環境も重視する傾向がある
こうした点は定着支援の設計にも影響します。
特定技能外国人の技能水準はどの程度か
特定技能1号では技能評価試験によって、自動車運送業で働くために必要な基本知識を有していることが確認されています。ただし実務では試験合格だけで判断することは適切ではありません。例えば次のような違いによって適応力には差が生じます。
- 大型車の運転経験の有無
- 都市部での運転経験の有無
- 長距離運行経験の有無
- 接客経験(バス・タクシー)
そのため採用面接では、これまで担当していた車種や運行内容を確認することが重要になります。
日本国内在留外国人は原則としてドライバー未経験
日本国内に在留している外国人材については、これまでの在留資格制度ではトラック・バス・タクシーの運転業務に従事できる資格が存在していなかったため、特定技能(同分野)の転職者などを除けばドライバーとしての実務経験を有しないケースが基本となります。そのため国内在留者を採用する場合には、未経験者として教育体制を前提に検討することが重要になります。
海外での運転経験は参考情報として評価する
海外でトラックやバスの運転経験を持つ人材は多く見られますが、その経験はそのまま日本の運送業務に適応できることを意味するものではありません。特に次のような違いが実務適応に影響します。
- 車両規格の違い
- 交通量の違い
- 道路整備状況の違い
- 時間管理に対する意識の違い
- 事故責任に対する考え方の違い
そのため経験の有無にかかわらず、日本仕様の業務運転教育が必要になります。
安全運転意識は国籍ではなく個人ごとに判断する
外国人ドライバーについて安全意識が低いのではないかと心配されることがありますが、実際には安全意識は国籍では判断できるものではありません。ただし出身国の交通事情が運転行動に影響することは事実であり、例えば次のような点は理解しておく必要があります。
- 歩行者優先意識の違い
- 二輪車交通の多さ
- 信号遵守の考え方
- 交通取締りの厳しさ
採用時にはこうした背景を踏まえて個別に確認することが重要になります。
業務運転は会社の信用を背負う行為であるという理解が重要
日本の運送業界では「看板を背負って走る」という言葉があります。これは事業用自動車の運転が単なる個人の運転ではなく企業の信用に直結する行為であることを意味します。実際に事業用自動車による事故や交通違反が発生した場合には運転者本人だけでなく事業者の安全管理体制も評価対象になります。
外国人材の中には私的運転と業務運転の違いを十分に理解していないケースもあるため、受入れにあたっては次の点を明確に伝えることが重要です。
- 業務運転は会社の評価に直結する
- 交通違反は企業責任にも影響する
- 運転マナーは企業イメージにつながる
この認識を共有することが事故防止と定着の両方につながります。

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