自動車運送業分野で外国人材の受入れが進む中、労務管理に関する相談は年々増えています。
特に多いのが、「日本人社員と同じ扱いをしていれば問題はないのか」という疑問です。
結論からいえば、労働法上は同じでも、在留資格という追加のルールがある点が、外国人雇用における大きな注意点となります。
ここでは、日本人社員との違いを踏まえながら、実務上押さえておくべきポイントを解説します。
目次
労働関係法令は日本人社員と同様に適用される
外国人ドライバーであっても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働関係法令は日本人社員と同様に適用されます。
労働時間、休憩・休日、残業代の支払い、社会保険の加入などについて、外国人であることを理由に不利な取扱いをすることは認められていません。
この点だけを見ると、「日本人と同じ管理で問題ない」と思われがちです。
重要!外国人雇用では入管法への配慮が不可欠
外国人雇用において、日本人社員との本質的な違いとなるのが、出入国管理及び難民認定法(入管法)への対応が必要になる点です。
外国人は、それぞれの在留資格ごとに、
- 従事できる業務内容
- 就労の範囲
- 働き方
が厳格に定められています。
企業側に悪意がなくても、在留資格の範囲を超えた就労をさせてしまうと、違法となるおそれがあります。
副業・アルバイトの取扱いは特に要注意
実務上、トラブルになりやすいのが副業やアルバイトの扱いです。
例えば、同じ業務に従事する日本人ドライバーについて、
- 休日のアルバイト
- 副業としての他社就労
を認めているケースは珍しくありません。
しかし、外国人ドライバーに対して同様の副業を認めると、在留資格で認められていない活動に該当する可能性があります。
この場合、
- 外国人本人は不法就労
- 企業側は不法就労助長罪
に問われるおそれがあり、企業にとっても重大なリスクとなります。
「日本人と同じ扱い」が必ずしも安全とは限らない
外国人雇用では、「日本人社員と同じ条件だから問題ない」という判断が、かえってリスクになることがあります。
特に注意すべきなのは、
- 業務内容の追加や変更
- 勤務時間の延長
- 繁忙期の応援業務
- 副業や兼業の許可
といった日常的な運用です。これらが在留資格の範囲を超えていないかを、常に確認する必要があります。
自動車運送業分野は特に慎重な管理が求められる
自動車運送業分野では、
- 勤務時間が不規則になりやすい
- 繁忙期・閑散期の差が大きい
- 業務内容が多岐にわたる
といった特性があります。
そのため、知らないうちに在留資格の範囲を逸脱してしまうリスクが、他業種よりも高い傾向にあります。
外国人ドライバーを受け入れる場合には、制度理解を前提とした慎重な労務管理が欠かせません。
専門家と連携した体制づくりがトラブル防止につながる
外国人材の雇用では、労働法と入管法の両方を踏まえた管理体制が求められます。
実務上は、
- 入管法に精通した行政書士
- 労務管理を専門とする社会保険労務士
と連携しながら運用することで、不法就労や行政指導といったリスクを未然に防ぐことが可能になります。
まとめ|外国人雇用では制度理解が不可欠
外国人ドライバーの雇用においては、「日本人と同じ扱いをする」だけでは十分とはいえません。
労働法に加え、在留資格という視点を持ち、外国人材が適法に、安心して働ける環境を整えることが、結果として企業の安定的な人材確保につながります。
今後、外国人雇用を進める企業にとって、制度理解と適切な労務管理は避けて通れない重要なテーマといえるでしょう。

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