こんにちは。特定技能を専門とする行政書士の長井です。今回も特定技能(トラック運送業)の制度について、ご理解が進むよう簡潔に解説していきますので、最後までご一読いただけましたら幸いです。
目次
在留資格の基本解説(トラック運送業)
この記事では、外国人雇用を検討する運送会社向け基礎知識として「在留資格」(ビザ)について必要な情報を解説します。在留資格の概要に加え、外国人が所属する機関(例えば勤務先)が注意すべき点についても詳しく説明しています。
1、在留資格
日本でよく使われる「ビザ」という言葉ですが、正式には「在留資格」と言います。在留資格は全部で29種類あり、それぞれの資格に応じて認められている活動が日本国内で限定されています。また、1人が持てる在留資格は1種類のみで、保持している在留資格に指定されていない活動や就労は禁止されています。
この点を理解しやすくするために、自動車の免許制度に例えてみましょう。
自動車免許には、普通自動車免許から中型、大型、特殊車両、そして二輪車まで様々な種類があります。二輪車の免許では普通自動車を運転することはできませんし、普通自動車の免許では大型トラックを運転することができない、これは皆さんがよく知る常識です。
在留資格においても同様に、各資格ごとに許可されている活動が限定されています。
要は、各在留資格において、「できること」「できないこと」があるということです。
まずは、法規制を守る上で非常に重要な知識となります。
2、罰則
外国人への罰則
在留資格において規定に違反した場合や許可されていない活動を行った場合、いくつかの重大な措置が取られることがあります。これらには「退去強制命令」、「出入国在留管理局への収容」、そして「強制送還」が含まれます。
自動車免許に例えると、これらの措置は「免許取り消し」に相当します。つまり、違反が発覚した場合、運転の資格を完全に失うことと同じように、日本での在留資格を喪失し、国外に退去しなければならなくなるということです。このような事態に至ると、日本国内での生活や活動が法的に認められなくなるため、非常に重大な影響を受けます。
雇用主への罰則
もし在留資格の規定に違反して企業側が不法就労を助長する行為があった場合、「不法就労助長罪」が成立する可能性があります。これは、違法な就労を支援または容認する行為を指し、法律により厳しく罰されます。具体的には、この犯罪で有罪となった場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されることになります。
不法就労助長罪に関する詳細な解説は、下記の記事にて行っています。企業担当者の方々には、この問題についての理解を深め、適切な対策を講じるためにも、ぜひ記事をご一読いただくことをお勧めします。この知識は、違法行為を未然に防ぎ、法令遵守の観点からも重要です。
3、在留資格の例
例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」というものがあります。これは特に日本での外国人雇用において最も一般的なケースの一つです。この資格は、大卒相当の学歴要件を満たす外国人が、自然科学や人文科学の専門技術を活用した職業、またはその母国固有の思考や感性を活かす国際業務に従事するために設けられています。
この在留資格を持つ人々は、職種によって多岐にわたりますが、具体的には以下のような分野で働くことが一般的です。
文系職種
- 営業
- 財務
- 人事
- 総務
- 企画
- 通訳・翻訳
- 語学教師
- デザイナー
理系職種
- システムエンジニア
- プログラマー
- 設計
- 生産技術
重要な点として、この在留資格では単純労働に該当する職種は対象外とされています。つまり、トラックドライバーは単純労働とみなされているため、この在留資格でトラックの運転手の業務に従事することができないということです。
また、この資格は更新の回数に制限がなく、適切な就労先が保持されている限り、在留資格保持者は日本で継続して働くことが可能であると同時に、母国の家族(妻・子)を日本へ呼寄せることも可能です。一方でトラックドライバーとして従事する特定技能外国人の在留資格「特定技能1号」においては、1年毎の更新、家族の呼寄せ不可となっています。
もし、トラック運送業の分野においてこの「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で働くことを希望するなら、例えば「特定技能外国人の通訳や翻訳業務」ということになります。
4、適切でない在留資格での就労の例
これまで私へのご相談案件において、下記のようなケースがありました。
事例1:産業廃棄物処理業者
- 外国人が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持ちながら、専門技術や知識を必要としないゴミの仕分け作業に従事していました。この職種は在留資格の対象外と考えられます。
事例2:介護施設
- 介護施設で「技術・人文知識・国際業務」の資格を持つ外国人が一般的な介護業務に従事していたケース。通常、介護業務は「特定技能1号」もしくは「介護」の在留資格が必要です。
事例3:飲食店
- 飲食店の厨房やホールでの仕事は「技術・人文知識・国際業務」で働くことはできません。この場合はの適切な在留資格は「特定技能1号」となります。
- 留学生等は資格外活動許可といって、制限内(週28時間の制限)でアルバイト等を行うことができます。この28時間以上勤務した場合には、資格外活動許可の取り消しの対象となります。この問題を回避するために雇用主から現金で給与を受領している外国人も多くみられます。
これらのケースでは、在留資格の制約や要件を誤解している企業が雇用することで、外国人労働者自身が不法行為に巻き込まれるリスクがあります。また、企業も法的な罰則や社会的な評価の低下を招くことがあります。
企業は在留資格に基づいて外国人労働者を雇用する際、その資格が許可する業務内容を正確に理解し、遵守することが重要です。法規制を守ることで、企業と外国人労働者の両者が安心して働ける環境が確保されます。このような問題を未然に防ぐためには、事前に専門家の助言を得たり、適切な研修を受けることが助けになります。
5、正しい在留資格での就労
普通自動車免許で大型トラックを運転できないのと同じで、在留資格のも働き方に応じた適切な資格があります。これを専門用語で「適合性」といいますが、この適合性が不適切な条件下での就労は、法律違反にあたり、雇用する企業だけでなく、労働者自身も罰せられる可能性があります。
雇用主と外国人労働者への影響
- 法的リスク – 不適切な就労条件は、退去強制命令や罰金、懲役などの法的措置を引き起こす可能性があります。
- 信頼と評判の低下 – 法規違反は企業の評判を損ない、将来的なビジネスの機会に影響を及ぼすことがあります。
企業担当者が講じるべき対策
- 在留資格の確認 – 雇用する前に、外国人労働者の在留資格とそれに基づく許可された活動内容を確認し、常に最新の情報に基づいて管理することが必要です。
- 適切な研修の提供 – 在留資格に関する知識を持つ専門家による研修を定期的に受けることで、企業担当者の認識を向上させることができます。
- 法的適合性の監査 – 定期的に労働環境の監査を行い、違法な就労が行われていないかを確認することも重要です。
- 適切な対応策の実施 – 不適切な就労状況が発覚した場合は、速やかに在留資格の変更申請を行うか、在留資格に合った業務に切り替える必要があります。
これらの対策を講じることにより、企業は法的な問題を未然に防ぎ、外国人労働者と共に健全な労働環境を維持することが可能となります。外国人労働者の在留資格と関連する法規制に対する適切な理解と対応は、グローバルな労働市場において企業が持続可能な運営を行う上で不可欠です。
まとめ
いかがでしたか。
今回はトラック運送業で外国人トラックドライバーを雇用するにあたり、まずは知っておかなければならない「在留資格」(ビザ)について解説してみました。
在留資格というテーマは、日常生活ではなかなか触れる機会がないかもしれませんが、これからトラック運送業者が外国人を雇用する際には非常に重要な要素です。
これから受入れがはじまるトラック運送業界においては、単に労働力として外国人を雇用するだけでなく、法的責任と倫理的配慮を兼ね備えた姿勢で接することが求められます。正しい在留資格の理解と適切な対応が、外国人労働者との健全な労働関係を構築する上で不可欠です。
この記事をお読みいただきありがとうございました。
このブログで他の記事もご確認いただき、外国人の受け入れに関するさらなる知識と理解を深めていただければと思います。
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