特定技能トラック運送業:運行上の5つの問題点│特定技能×運送業│解説ブログ

特定技能トラック運送業:運行上の5つの問題点│特定技能×運送業│解説ブログ

2024年5月12日

記事内容:運送会社で特定技能外国人を雇用するにあたり、運行上想定される問題点(誤配・言語・伝票・事故・人間関係)とその解決策を個別具体的に解説した記事になります。


こんにちは。トラックドライバー歴18年で、現在は特定技能を専門とする行政書士の長井です。
今回も特定技能(トラック運送業)の制度について、ご理解が進むよう簡潔に解説していきますので、最後までご一読いただけましたら幸いです。

今回は、運送会社で特定技能1号外国人を雇用し、1人でトラックに乗務させた場合に起こりえる問題点を想定し、それに対する解決策をお伝えしていきます。

その1:運行上のミス

トラックドライバーの仕事では、国籍に関係なく、日本人ドライバーであっても何らかのかたちでミスが発生します。私自身、注意深い性格でありながらも、ドライバーとして働いていた際にいくつかのミスを経験しました。

一般的なミスには、誤配送、荷物の破損、トラック庫内での荷崩れなどがありますが、これらの問題に対する解決策を含め、詳しい説明は下記の記事で行っていますので、ぜひ参考にしてください。

特定技能トラック運送業:想定される業務上のミスと解決策│特定技能×運送業│解説ブログ
記事内容:運送会社で特定技能外国人を雇用し、業務上想定される誤配や破損、荷崩れという事態に焦点をあてて解説した記事となります。 こんにちは。トラックドライバー歴…
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その2:言語

特定技能1号の外国人は、日本語能力検定でN4レベル以上に合格しているものの、その日本語能力には個人差があります。あいさつ程度から冗談を言えるレベルまで、その幅は大きいです。実際に、私が空港で来日した特定技能1号の外国人を出迎えた際に、「本当にこの日本語能力で生活できるのか?」と疑問に感じることもあります。

たとえば、2拠点間の定期輸送など日々の単純作業では、臨機応変な対応をそれほど求められず、状況に応じた日本語の使い分けも必要ありません。しかし、日々異なる配送先や多様な積荷を扱うルートでは、より高度なコミュニケーションが求められることがあります。

解決策としては、採用時の面接で候補者の日本語能力を詳しく評価し、自社の業務内容に合わせて適切に配属することが重要です。 雇用後は、初めは簡単な業務から始め、徐々に難易度を上げていくことで、特定技能1号外国人従業員のスキルアップを図る方法を推奨します。

その3:伝票や送り状の表記

トラックドライバーとしての業務は、荷物の積み込み、運転、荷下ろしに加えて、伝票の整理や提出も重要な部分です。これらの業務は荷主によって要求内容が異なることがあります。

特定技能1号の外国人ドライバーにとって、伝票の「日本語表記」が大きな課題です。私の事務所に来る、日本在住10年から30年で永住権を持つ経験豊富な外国人でさえ、「漢字は苦手」とよく言います。

すべての伝票を外国語に翻訳するわけにはいかないため、初期段階では、伝票作業が比較的単純な業務を担当させることが一つの解決策です。さらに、技術的な支援として、ポケトークアプリの使用を推奨します。このアプリは会話の通訳だけでなく、文字の翻訳機能も備えており、私自身も外国人クライアントの相談対応や申請準備の打ち合わせで活用しています。このようにアプリを用いることで、伝票関連の作業をよりスムーズに行うことが可能です。

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その4:事故発生時の対応

特定技能1号外国人がトラックに1人で乗務している状況では、交通事故や交通違反で警察に止められる可能性にも備える必要があります。事故が発生した場合、日本人ドライバーでもパニックになることが想定されますが、外国人ドライバーは日本語で状況を正確に報告することがさらに困難です。

このようなトラブルに対処するための解決策として、乗務するトラック内に「事故発生時の対応方法」をわかりやすく、簡潔に記載し、それをひらがなで表示することが有効です。また、トラブルが発生した際には、日本人担当者が迅速に現場に駆けつける体制を整えることも重要です。これにより、外国人ドライバーが直面する可能性のある緊急事態に迅速かつ適切に対応できるようになります。

その5:同僚との交流

外国人が日本で働く際、特に特定技能1号のような場合、彼らが他の日本人従業員との交流で仲良くなるか孤立するかは極端に分かれることがあります。社内でのコミュニケーションがスムーズに行われれば問題は少ないですが、孤立することは十分に考えられます。特にトラックドライバーは、コミュニケーション能力低い傾向にあり、同僚との交流も少なめであることが一般的で、その特性が孤立を助長することもあります。

特定技能1号の外国人ドライバーが社内で孤立し、その結果として転職を考えるようになると、事業主にとっては投資した時間や労力が無駄になるリスクがあります。また、人手不足の問題も解消されません。

この問題に対処するために、企業は以下のような対策を講じることができます:

  1. 交流の場の提供: 社内イベントやチームビルディングの活動を積極的に行い、外国人従業員と日本人従業員間の自然な交流を促す。
  2. 同僚の理解促進: 日本人ドライバーへの教育を強化し、外国人従業員への理解とサポートを促す研修を定期的に実施。
  3. 上層部の関与: 社長や管理職が自ら交流を促す姿勢を示し、外国人従業員が社内で受け入れられやすい環境を作る。

これらの措置は、特定技能1号外国人が職場に溶け込み、長期的に安定して働ける基盤を築くのに役立ちます。

まとめ

今回ご説明したのは、特定技能1号外国人をトラックドライバーとして雇用する際に生じる可能性のある問題点と、それに対する解決策です。

自動車運送業界が人手不足に悩まされている背景には、この業種が抱える一連の問題が影響しています。私自身、長年トラックドライバーとして働いた経験から見ても、運送業は肉体的にも精神的にも厳しい職場であり、長時間労働、業務の単調さ、厳格な規則、そして人間関係の問題などが挙げられます。

「人手不足だから外国人労働者を雇えば解決する」という単純な考えは、問題を本質的には解決しません。むしろ、この業界の現状を真摯に受け止め、改善を図ることが先決です。特定技能1号外国人を雇用する際には、彼らが直面するであろう問題点を事前に洗い出し、適切な対策を準備しておく必要があります。

このようなアプローチにより、外国人労働者も含めた全ての従業員が働きやすい環境を整えることが、業界全体の持続可能な発展に繋がるでしょう。