特定技能×解説ブログ:特定技能制度の基礎知識

特定技能×解説ブログ:特定技能制度の基礎知識

2022年5月15日

こんにちは。特定技能を専門とする行政書士の長井です。
今回も特定技能制度について、ご理解が進むよう簡潔に解説していきますので、最後までご一読いただけましたら幸いです。

「特定技能ってどんな在留資格なの?」、「うちの会社で特定技能外国人の雇用はできるの?」、「技能実習とは何が違うの?」といったご質問にお答えします。

特定技能ビザは、日本の人手不足を解消するために設けられた在留資格です。特定の対象業種に限られてはいますが、基準を満たした外国人を即戦力として雇用することが可能です。このビザ制度は、特定の技能を持つ労働者が日本の労働市場に参加することを可能にすることを目的としています。

この記事では、在留資格「特定技能」について、以下の点を解説していきます:

  • 制度の概要:特定技能ビザがどのように機能するか、どの業種が対象か。
  • 受入基準(要件):特定技能外国人を雇用するために企業が満たすべき条件。
  • 他の在留資格との違い:技能実習ビザや他の労働関連ビザとの主な違い。

この情報をもとに、自社に合った外国人雇用を検討し、実際に外国人の受入れを検討している企業担当者の方々に役立つ情報を提供します。外国人労働力の活用を考えている場合は、この記事を参考にしてください。

特定技能とは

特定技能とは、2019年4月に導入された新しい在留資格です。在留資格には様々な種類があり、目的に応じて30以上のカテゴリーが存在しますが、「特定技能」もその中の一つに数えられます。このビザは、特に日本の人手不足を解消することを目的として設計されています。

外国人が働くことが可能な職種は現状「14業種」に限定されており、これには介護、建設業、農業などが含まれます。これらの業種は、特に労働力不足が顕著な分野であり、外国人労働者を通じてそのギャップを埋めることを目指しています。また、政府は状況に応じて新たな職種の追加も検討しているため、この在留資格の対象範囲は今後拡大する可能性があります。

特定技能ビザは、日本での長期的な雇用を可能とし、一定の条件と要件を満たした外国人がその技能を活かして働くことを促進します。この制度は、国内の労働市場を支える重要な役割を担っています。

特定技能1号と2号の違い

特定技能ビザには「1号」と「2号」という二つのカテゴリがあります。これらは以下のように簡単に理解すると良いでしょう:

  • 1号:「5年間の契約社員」として働くことができます。この期間内でのスキルアップや日本での生活適応を目指し、特定の業務に従事します。
  • 2号:「日本人と何ら変わらない社員」として働くことが可能です。これは1号を超える更なる技能や知識が認められた場合に付与され、無期限での雇用や家族の同伴が可能となります。

雇用可能な職種(業種)

◎介護(訪問介護はNG)
◎宿泊(ホテルや旅館)
◎外食(飲食店全般)
◎飲食料品製造
◎建設(11の作業区分のみOK)
◎ビルクリーニング
◎自動車整備
◎農業(派遣可)
◎漁業(派遣可)
◎素形材産業
◎産業機械製造業
◎電気・電子情報関連産業
◎航空
◎造船・舶用工業
◎運送業
◎林業

特定技能外国人のイメージイラスト

職種(業種)ごとの受入れ状況(2022年4月現在)

職種5年受入目標受入状況
介護60,000人7,019人
宿泊22,000人124人
外食53,000人2,312人
飲食料品製造業34,000人22,992人
建設40,000人6,360人
ビルクリーニング37,000人839人
自動車整備7,000人986人
農業36,500人8,153人
素形材産業21,500人3,928人
産業機械製造業5,250人6,021人
電気・電子情報関連産業4,700人3,258人
航空2,200人49人
造船・舶用工業13,000人1,971人
漁業9,000人718人
全職種(業種)345150人64,730人

特定技能ビザの取得ルート

2022年4月の最新統計データによると、特定技能ビザを通じて日本で働く外国人労働者の数が次のようになっています:

  • 試験ルート(新規入国者や他の職種からの変更者を含む):13,122人
  • 移行ルート(特に技能実習からの移行が大半):51,298人

このデータから明らかなように、「移行ルート」を通じて特定技能ビザを取得するケースが多く、これはコロナウイルスの影響で母国へ帰国できない外国人が日本での就労を継続するための移行が一因と考えられます。

特に、飲食料品製造業で働く特定技能外国人の数が突出しており、その後に工業、建設、介護業界が続いています。現状では、政府の設定した受入目標にはまだ達していないため、今後は手続きの簡略化や他国との連携強化が進むことが予想されます。

技能実習から特定技能への移行方法に関する詳細な解説は、下記の記事にて提供されていますので、これから特定技能ビザの取得を検討している方や、既に技能実習生として働いている方々にとって非常に有益な情報となるでしょう。

特定技能×解説ブログ:技能実習から特定技能への移行できる?できない?
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特定技能外国人の国籍や性別・年齢は?

「国籍」

1位:ベトナム
2位:フィリピン
3位:インドネシア
4位:中国
5位:ミャンマー

「性別」

男性:32,591人

女性:32,139人

「年齢」

・19歳~29歳 6割

・29歳~39歳 3割

・その他     1割

技能実習と何が違う?

項目特定技能1号技能実習
関係法令入管法入管法/技能実習法
在留資格特定技能1号技能実習
在留期間通算5年1号は1年以内。2号・3号は2年以内
外国人の技能水準相当程度の知識又は経験が必要なし
資格取得試験技能試験と日本語試験なし※介護のみ日本語試験
送出機関なしあり(外国側の機関)
管理団体なしあり(日本側の機関)
支援機関あり(登録支援機関)なし
双方のマッチング直接採用も可能基本は監理団体等を通す

確かに、「外国人の技能水準」は注目すべきポイントです。技能実習制度では、一定の基準を満たす外国人が送出機関を通じて幅広く受け入れられていますが、特定技能制度では技能試験と日本語試験をクリアした者だけが特定技能外国人となるため、受け入れる外国人の質が異なります。

具体的には、技能試験と日本語試験をクリアした特定技能外国人は、その分野における一定水準の技能と日本語能力を持っていることが保証されます。一方、技能実習生は、基準を満たすことで受け入れられますが、その技能水準や日本語能力は必ずしも保証されません。

したがって、特定技能外国人を雇用することで、企業はより高い技能水準を持つ労働力を得ることができます。これにより、業務の効率化や品質向上が期待できる一方で、より高いレベルの技術と知識を持つ人材の育成や活用が求められます。

特定技能試験

特定技能ビザを取得する際に外国人本人の要件で最も重要なのは、「特定技能の技能試験」と「日本語試験」に合格していることです。

技能試験

  • 各職種(業務)において、特定技能試験があります。
  • 例えば、レストランで働く場合は「外食業」の特定技能試験を合格し、ホテルや旅館の場合は「宿泊業」の特定技能試験を合格する必要があります。
  • 特定技能試験は、職種ごとに細分化されており、建設業や工業などでは、従事する仕事内容によって異なる試験を受けることがあります。

日本語試験

  • 共通の日本語試験としては、「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」に合格する必要があります。
  • ただし、介護分野では上記の日本語試験に加えて、「介護日本語評価試験」にも合格する必要があります。

これらの試験に合格することで、外国人労働者は特定技能ビザを取得するための最も重要な要件を満たすことができます。技能試験は職種に応じて異なる内容となっており、日本語試験も職種によって異なる要件がありますので、注意深く準備する必要があります。

6つの適合性

「適合性」とは、簡単に言えば「基準を満たしているかどうか」ということです。特定技能の場合、この適合性は以下の6つの角度からチェックされます。

  1. 特定産業分野該当性
  2. 業務区分該当性
  3. 受入機関適合性
  4. 契約適合性
  5. 支援計画適合性
  6. 申請人(外国人)の適合性

これらの角度から、特定技能を持つ外国人労働者が、雇用される職種や業務、受け入れ機関、契約条件、サポート計画、そして外国人自身の適性などが、特定技能制度の基準に適合しているかどうかが評価されます。

①特定産業分野該当性

特定産業分野該当性とは、対象となる14の職種に入っているか?というものです。前述した

◎介護(訪問介護はNG)◎宿泊(ホテルや旅館)◎外食(飲食店全般)◎飲食料品製造◎建設(11の作業区分のみOK)◎ビルクリーニング◎自動車整備◎農業(派遣可)◎漁業(派遣可)◎素形材産業◎産業機械製造◎電気・電子情報関連産業◎航空◎造船・舶用工業◎運送業◎林業

この分野に該当するのであれば問題ありません。

②業務区分該当性

「業務区分適合性」とは、従事させる仕事の内容のことです。

特定技能制度では、介護や宿泊・外食などの職種については一般的に認められていますが、建設業や飲食料品製造業、素形材産業、建機、電子情報関連産業など、職種ごとに細分化されているため、注意が必要です。

業務区分適合性を甘く見て、特定技能外国人を該当しない業務に従事させると、不法就労助長罪に問われる厳しい罰則があります。したがって、事業主はこの点をしっかりと把握し、適切な業務に外国人を配置する必要があります。

外国人を雇用する際には、不法就労助長罪に関する法的規定を理解し、適切な措置を講じることが重要です。下記のサイトでは「不法就労助長罪」について詳しく解説されていますので、参考にしてください。

特定技能×解説ブログ:受入れ企業の罰則「不法就労助長罪」
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③受入機関適合性

受入機関、つまり雇用する企業のことです。
そもそも特定技能は、人手不足解消の在留資格であるため外国籍労働者に「働いてもらう」(助けてもらう)という考え方です。そのようなことから、この在留資格においては外国人より受入機関(雇用する企業)を重視して審査がなされます。

④雇用契約適合性

特定技能の申請を行う外国人と受入企業との雇用契約のことです。
基本的には「日本人と同等」というキーワードが重要となり、現在雇用している日本人と照らし合わせて同等を証明していきます。
その他、不本意な給与からの徴収も厳しくチェックされます。

⑤支援計画適合性

「支援計画適合性」とは、就労目的で来日した外国人の支援に関する適合性を指します。この適合性は、以下のような要素を含みます。

  1. 支援する責任者や担当者の選任
  2. 外国人の母国語での対応(苦情や相談)の可否
  3. 一時帰国時の支援
  4. 日本語学習の機会の提供
  5. 日本人との交流促進

このように、特定技能外国人の日常生活と仕事のサポートができるかどうかが評価されます。この支援計画には10の支援項目がありますが、1つでも支援できない場合には、「登録支援機関」という団体に委託することができます。支援計画の適合性を確認することで、外国人労働者が円滑に日本での生活や仕事を送ることができるようサポートする体制が整えられます。

⑥申請人(外国人)の適合性

特定技能の場合、申請人に対する審査は要件チェックのみとなります。要件を満たしていれば、在留資格を取得できるということです。

具体的な要件は以下の通りです。

  1. 18歳以上で健康であること
  2. 素行が不良でないこと
  3. 試験に合格していること

また、ビザ変更の場合には以下の条件も追加されます。

  1. 直近1年間の住民税の未納がないこと
  2. 直近2年間の健康保険の未納がないこと
  3. 在留中の国民年金の未納がないこと

他の在留資格では、学歴と従事する仕事の関連性まで立証する必要がありますが、特定技能の場合には「要件審査」のみなので、申請前にその可否が判断できます。

まとめ

いかがでしたか。
この記事では、在留資格特定技能に関する基礎的なことを解説いたしました。
記事中にもありましたが、人手不足解消のためのビザという性質上、今後も受入れが拡大していくことが見込まれると同時に、技能実習生からの移行も更に加速することでしょう。

このブログでは、特定技能を専門とする行政書士が、今後特定技能外国人の受入れを検討される企業様に向けて有益な情報を配信しております。
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