外国人ドライバーを自動車運送業分野で雇用する場合、同乗研修(横乗り研修)は、安全確保と人材定着の両面で極めて重要な位置づけとなります。同乗研修は単なる運転練習の期間ではなく、日本の交通環境、職場文化、仕事の進め方を総合的に理解してもらうための実務研修です。
特に特定技能1号(自動車運送業分野)では、外国人ドライバーのバックグラウンドが多様であるため、画一的な研修では不十分なケースも少なくありません。
ここでは、現場から多く寄せられる「同乗研修で注意すべき点」について、実務目線で解説します。
なお、同乗研修を行う教育担当者の選任については、下記の記事を参考にしてみてください。
目次
同乗研修で注意すべき点は何ですか?
同乗研修での注意点は、外国人ドライバーがどのような経緯で来日し、日本でどの程度の生活・運転経験を有しているかによって大きく変わります。
まずは、その前提条件を正しく把握することが重要です。
日本での生活経験・運転経験による対応の違い
すでに日本国内で生活経験があり、日本での運転経験も一定期間ある外国人ドライバーの場合、日本の交通ルールや運転マナーについて大きな問題が生じるケースは比較的少ないといえます。
一方、海外から初めて来日し、日本で初めて本格的に運転業務に従事する外国人ドライバーについては、より慎重な対応が求められます。
国によっては、
・車両優先の考え方
・歩行者や自転車に対する意識
・標識や信号の捉え方
などが日本とは大きく異なる場合があります。
そのため、日本の運転免許を取得している場合であっても、同乗研修では「日本での実務運転は初めてである」という前提で指導することが不可欠です。
運転免許を過信しない指導姿勢が重要
外国人ドライバーの中には、母国で長年の運転経験があり、日本の免許も取得しているケースがあります。
しかし、免許の有無と、日本の運送業務における安全運転ができるかどうかは別問題です。
同乗研修では、
・日本特有の狭い道路事情
・住宅地や工業地帯での注意点
・配送先周辺での危険箇所
などを重点的に確認し、「日本で仕事として運転する」感覚を身につけてもらうことが重要です。
日本語能力と業界特有の表現への配慮
同乗研修で最もトラブルが起きやすいのが、言葉の理解に関する問題です。
自動車運送業の現場では、日常会話とは異なる業界用語や略語、日本独自の表現が多用されます。
例えば、
・ハンドルを切る
・ミラーをたたむ
・巻き込み注意
・ラップを巻く
・指差し呼称
これらの表現は、日本人同士では当然のように通じますが、外国人にとっては意味が曖昧なまま理解されてしまうことも少なくありません。
理解を深めるための具体的な指導方法
同乗研修の指導員には、次のような工夫が求められます。
・専門用語を使わず、簡単な日本語で説明する
・一文を短く区切って話す
・実際の動作や位置を指し示しながら説明する
・理解できたかをその都度確認する
「説明した=理解した」と思い込まず、双方向の確認を行うことが事故防止につながります。
日本特有の職場ルール・安全意識も重要な指導内容
同乗研修は、運転技術だけを教える場ではありません。
日本の職場で重視される行動や考え方についても、同時に指導する必要があります。
例えば、
・時間厳守の考え方
・報告・連絡・相談(ホウレンソウ)の重要性
・安全確認を最優先する姿勢
これらは、母国ではそれほど重視されていない場合もあります。
背景や理由を含めて説明することで、納得感を持って理解してもらいやすくなります。
指導員の負担を軽減する視点も欠かせない
同乗研修は、指導を受ける外国人ドライバーだけでなく、指導する側にも大きな負担がかかります。
特に、言葉が十分に通じない状況が続くと、指導員が強いストレスを感じるケースもあります。
その結果、
・指導が感情的になる
・注意が厳しくなりすぎる
・研修の質が低下する
といった悪循環に陥るおそれがあります。
運行管理者が関与すべきポイント
こうした事態を防ぐためには、運行管理者が研修を現場任せにしないことが重要です。
具体的には、
・同乗研修の進捗状況を定期的に確認する
・外国人ドライバーの理解度を把握する
・指導員からの相談や不安を受け止める
といった関与が求められます。
必要に応じて、研修内容の調整や指導員の交代を検討することも、管理者としての重要な役割です。
同乗研修の質が安全と人材定着を左右する
同乗研修の質は、外国人ドライバーの安全意識や仕事への姿勢に直結します。
適切な研修を行うことで、事故防止だけでなく、職場への信頼感が高まり、人材の定着にもつながります。
外国人ドライバーの背景を理解し、言語や文化の違いに配慮した同乗研修を行うことが、安全で持続可能な外国人雇用の基盤となります。
形式的な研修にしないために
同乗研修を「決められた期間をこなすだけ」の形式的なものにしてしまうと、本来の目的は達成できません。研修の目的を明確にし、運行管理者・指導員・外国人ドライバーが共通認識を持つことが重要です。
同乗研修を、人材育成と安全確保のための重要な経営施策として位置づけることが、今後の自動車運送業における外国人雇用成功の鍵となります。

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