こんにちは。特定技能を専門とする行政書士の長井です。
今回も特定技能(トラック運送業)の制度について、ご理解が進むよう簡潔に解説していきますので、最後までご一読いただけましたら幸いです。
目次
特定技能トラックドライバー雇用の基礎知識
トラック運送会社で特定技能外国人を雇用する上で、最低限必要となる特定技能の基礎的知識を簡潔に解説した記事となります。
- 制度の概要:特定技能1号の制度をしるための基本的な解説。
- 受入基準(要件):特定技能外国人を雇用するために企業が満たすべき条件。
- 他の在留資格との違い:技能実習ビザや他の労働関連ビザとの主な違い。
特定技能の基礎知識
特定技能とは
特定技能とは、2019年4月に導入された新しい在留資格です。在留資格には様々な種類があり、目的に応じて30以上のカテゴリーが存在しますが、「特定技能」もその中の一つに数えられます。このビザは、特に日本の人手不足を解消することを目的として設計されています。
外国人が働くことが可能な職種は、2024年に「自動車運送業分野」「鉄道分野」「林業分野」「木材産業分野」が追加され、現状「18業種」に限定されています。
これらの業種は、特に労働力不足が顕著な分野であり、外国人労働者を通じてそのギャップを埋めることを目指しています。また、政府は状況に応じて新たな職種の追加も検討しているため、この在留資格の対象範囲は今後拡大する可能性があります。
特定技能ビザは、日本での長期的な雇用を可能とし、一定の条件と要件を満たした外国人がその技能を活かして働くことを促進します。この制度は、国内の労働市場を支える重要な役割を担っています。
特定技能1号と2号の違い
特定技能ビザには「1号」と「2号」という二つのカテゴリがあります。これらは以下のように簡単に理解すると良いでしょう:
- 1号:「5年間の正社員」として働くことができます。5年間の契約社員という方が適切でしょう。
- 2号:「日本人と何ら変わらない社員」として働くことが可能です。これは1号を超える更なる技能や知識が認められた場合に付与され、無期限での雇用や家族の同伴が可能となります。
特定技能(運送業)においては、当面の間は1号のみとなっています。
雇用可能な職種(業種)
◎介護(訪問介護はNG)
◎宿泊(ホテルや旅館)
◎外食(飲食店全般)
◎飲食料品製造
◎建設(11の作業区分のみOK)
◎ビルクリーニング
◎自動車整備
◎農業(派遣可)
◎漁業(派遣可)
◎素形材産業
◎産業機械製造業
◎電気・電子情報関連産業
◎航空
◎造船・舶用工業
◎運送業自動車運送業
◎林業
◎鉄道
◎木材産業
職種(業種)ごとの受入れ状況(2023年12月現在)
職種 | 受入状況 |
介護 | 28,400人 |
宿泊 | 401人 |
外食 | 13,312人 |
飲食料品製造業 | 61,095人 |
建設 | 24,433人 |
ビルクリーニング | 3,520人 |
自動車整備 | 2,519人 |
農業 | 23,861人 |
素形材産業・産業機械製造業・電気・電子情報関連産業 | 40,069人 |
航空 | 632人 |
造船・舶用工業 | 7,514人 |
漁業 | 2,669人 |
全職種(業種) | 64,730人 |
自動車運送業分野の受入目標数
令和6年度からの5年間で、最大2万4,500人
※大半はトラック運送業での雇用となりそうです。
特定技能ビザの取得ルート
2023年12月の最新統計データによると、特定技能ビザを通じて日本で働く外国人労働者の数が次のようになっています:
- 試験ルート(新規入国者や他の職種からの変更者を含む):69004人
- 移行ルート(特に技能実習からの移行が大半):139088人
自動車運送業分野においては、技能実習での受入がなされていないため、試験ルートでの在留資格取得となります。
特定技能外国人の国籍や性別・年齢
「国籍」
1位:ベトナム
2位:フィリピン
3位:インドネシア
4位:中国
5位:ミャンマー
「性別」
男性:115094人
女性:93331人
「年齢」
・19歳~29歳 6割
・29歳~39歳 3割
・その他 1割
特定技能試験
特定技能ビザを取得する際に外国人本人の要件で最も重要なのは、「特定技能の技能試験」と「日本語試験」に合格していることです。
技能試験
〇自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック)
試験対策のオンライン講義
トラック運送業とは異なる分野ですが、当事務所では「特定技能」(外食)の技能評価試験対策講義を定期的に実施しています。対象国は主にネパールで、現地で試験が実施されているため、日本とネパールをオンラインでつないで講義を行っています。
日本語試験
- 共通の日本語試験としては、「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」に合格する必要があります。
これらの試験に合格することで、外国人労働者は特定技能ビザを取得するための最も重要な要件を満たすことができます。技能試験は職種に応じて異なる内容となっており、日本語試験も職種によって異なる要件がありますので、注意深く準備する必要があります。
補足:第一種運転免許以上
自動車運送業分野(トラック運送業)においては、もちろん自動車運転免許も必要となります。この運転免許に関しては、日本で運転免許を取得した外国人を除き、免許証の切換えが必要となります。例えばネパールで運転免許を取得していても、そのままでは日本で自動車を運転することができません。これを可能にするのが「外免切替」という手続きです。
なお、この外免切替については、下記の記事で詳しく解説していますので、是非参考にしてみてください。
6つの適合性
「適合性」とは、簡単に言えば「基準を満たしているかどうか」ということです。特定技能の場合、この適合性は以下の6つの角度からチェックされます。
- 特定産業分野該当性
- 業務区分該当性
- 受入機関適合性
- 契約適合性
- 支援計画適合性
- 申請人(外国人)の適合性
これらの角度から、特定技能を持つ外国人労働者が、雇用される職種や業務、受け入れ機関、契約条件、サポート計画、そして外国人自身の適性などが、特定技能制度の基準に適合しているかどうかが評価されます。
①特定産業分野該当性
特定産業分野該当性とは、対象となる18の職種に入っているか?というものです。前述した
◎介護(訪問介護はNG)◎宿泊(ホテルや旅館)◎外食(飲食店全般)◎飲食料品製造◎建設(11の作業区分のみOK)◎ビルクリーニング◎自動車整備◎農業(派遣可)◎漁業(派遣可)◎素形材産業◎産業機械製造◎電気・電子情報関連産業◎航空◎造船・舶用工業◎運送業◎林業◎木材産業◎鉄道
この分野に該当するのであれば問題ありません。
②業務区分該当性
「業務区分適合性」とは、従事させる仕事の内容のことです。
特定技能制度では、介護や宿泊・外食などの職種については一般的に認められていますが、建設業や飲食料品製造業、素形材産業、建機、電子情報関連産業など、職種ごとに細分化されているため、注意が必要です。
業務区分適合性を甘く見て、特定技能外国人を該当しない業務に従事させると、不法就労助長罪に問われる厳しい罰則があります。したがって、事業主はこの点をしっかりと把握し、適切な業務に外国人を配置する必要があります。
外国人を雇用する際には、不法就労助長罪に関する法的規定を理解し、適切な措置を講じることが重要です。下記のサイトでは「不法就労助長罪」について詳しく解説されていますので、参考にしてください。
③受入機関適合性
受入機関、つまり雇用する企業のことです。
そもそも特定技能は、人手不足解消の在留資格であるため外国籍労働者に「働いてもらう」(助けてもらう)という考え方です。そのようなことから、この在留資格においては外国人より受入機関(雇用する企業)を重視して審査がなされます。
④雇用契約適合性
特定技能の申請を行う外国人と受入企業との雇用契約のことです。
基本的には「日本人と同等」というキーワードが重要となり、現在雇用している日本人と照らし合わせて同等を証明していきます。
その他、不本意な給与からの徴収も厳しくチェックされます。
⑤支援計画適合性
「支援計画適合性」とは、就労目的で来日した外国人の支援に関する適合性を指します。この適合性は、以下のような要素を含みます。
- 支援する責任者や担当者の選任
- 外国人の母国語での対応(苦情や相談)の可否
- 一時帰国時の支援
- 日本語学習の機会の提供
- 日本人との交流促進
このように、特定技能外国人の日常生活と仕事のサポートができるかどうかが評価されます。この支援計画には10の支援項目がありますが、1つでも支援できない場合には、「登録支援機関」という団体に委託することができます。支援計画の適合性を確認することで、外国人労働者が円滑に日本での生活や仕事を送ることができるようサポートする体制が整えられます。
⑥申請人(外国人)の適合性
特定技能の場合、申請人に対する審査は要件チェックのみとなります。要件を満たしていれば、在留資格を取得できるということです。
具体的な要件は以下の通りです。
- 18歳以上で健康であること
- 素行が不良でないこと
- 試験に合格していること
また、ビザ変更(日本在住の外国人)の場合には以下の条件も追加されます。
- 直近1年間の住民税の未納がないこと
- 直近2年間の健康保険の未納がないこと
- 在留中の国民年金の未納がないこと
他の在留資格では、学歴と従事する仕事の関連性まで立証する必要がありますが、特定技能の場合には「要件審査」のみなので、申請前にその可否が判断できます。
まとめ
いかがでしたか。
この記事では、在留資格特定技能1号(運送業)に関する基礎的なことを解説いたしました。
記事中にもありましたが、運転手の人手不足解消のためのビザという性質上、今後も受入れが拡大していくことが見込まれます。
このブログでは、特定技能を専門とする行政書士が、今後特定技能外国人の受入れを検討される企業様に向けて有益な情報を配信しております。
引き続き、他の記事もチェックしてみてください。
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