特定技能(漁業)で雇用する場合の要件

特定技能(漁業)で雇用する場合の要件

2022年6月22日

こんにちは。特定技能を専門とする行政書士の長井です。
今回も特定技能制度について、ご理解が進むよう簡潔に解説していきますので、最後までご一読いただけましたら幸いです。

この記事では、特定技能外国人を農業分野で雇用する方法について解説していきます。

この分野での注意点は、

漁業と養殖業に分けられていること

直接雇用と派遣雇用の2種類の雇用形態があること

その点に注意しながら読み進めてください。

1、主となる業務

下記の表に当てはまる業務に従事させることができます。
なお、特定技能外国人は、従事する業務の試験に合格していることが前提となります。

業務区分            業務内容
漁業漁具の製作・補修,水産動植物の探索,漁具・漁労機械の操作,水産動植物の採捕,漁獲物の処理
・保蔵,安全衛生の確保等
養殖業養殖資材の製作・補修・管理,養殖水産動植物の育成管理,養殖水産動植物の収獲(穫)
・処理,安全衛生の確保等

※※外国人は,漁業又は養殖業を主体的に営むものでなく,船⾧や漁労⾧等の監督者の指示を理解し,又は監督者の包括的な指示の下で自ら判断しながら,漁労作業や養殖作業の業務に従事する必要があります。

2、従事させてよい関連業務

当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務の例

【漁業の業務に従事している場合の関連業務】
・漁具・漁労機械の点検・換装
・船体の補修・清掃
・魚倉,漁具保管庫,番屋の清掃
・漁船への餌,氷,燃油,食材,日用品その他の操業・生活資材の仕込・積込み
・出漁に係る炊事・賄い
・採捕した水産動植物の生簀における畜養その他付随的な養殖
・自家生産物の運搬・陳列・販売
・自家生産物又は当該生産に伴う副産物を原料又は材料の一部として使用する製造・加工及び当該製造
 物・加工物の運搬・陳列・販売
・魚市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け
・体験型漁業の際に乗客が行う水産動植物の採捕の補助
・社内外における研修

【養殖業の業務に従事している場合の関連業務】
・漁具・漁労機械の点検・換装
・船体の補修・清掃
・魚倉,漁具保管庫・番屋の清掃
・漁船への餌,氷,燃油,食材,日用品その他の操業・生活資材の仕込・積込み
・養殖用の機械・設備・器工具等の清掃・消毒・管理・保守
・鳥獣に対する駆除,追払,防護ネット・テグス張り等の養殖場における食害防止
・養殖水産動植物の餌となる水産動植物や養殖用稚魚の採捕その他付随的な漁業
・自家生産物の運搬・陳列・販売
・自家生産物又は当該生産に伴う副産物を原料又は材料の一部として使用する製造・加工及び当該製造
 物・加工物の運搬・陳列・販売
・魚市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け
・体験型漁業の際に乗客が行う水産動植物の採捕の補助
・社内外における研修

※専ら関連業務に従事することは認められません
(関連業務のみさせることはダメということです)

3、雇用する企業側の条件

①直接雇用の場合

特に定められてはいませんが、協議会への加入は必須です。

②派遣雇用の場合

特になし。

【派遣元事業者としての条件】
※次のいずれかに該当すること

1.農業分野に係る業務又はこれに関連する業務を行っている者であること。
2.地方公共団体又は「1」に掲げる者が資本金の過半数を出資していること。
3.地方公共団体の職員又は「1」に掲げる者若しくはその役員若しくは職員が役員であることその他、地方公共団体又は「1」に掲げる者が業務執行に実質的に関与していると認められる者であること。
4.国家戦略特別区域法第16条の5第1項に規定する特定機関であること。

※なお、派遣元事業者も協議会への加入は必須となります。 

4、雇用形態

フルタイムでの直接雇用のみ認められます。
(フルタイム)
・労働日数が週5日以上
・年間217日以上
・週労働時間が30時間以上

※アルバイトやパート、または派遣形態での雇用は認められません。

5、合格が必要な試験

①技能試験

漁業技能測定試験:漁業もしくは養殖業 
試験実施団体:一般社団法人大日本水産会(こちら

②日本語試験

「日本語能力試験(JLPT)※N4以上」(こちら

もしくは

「国際交流基金日本語基礎テスト」(こちら

6、技能実習から移行の場合

以下の技能実習を良好に修了していれば試験なしで特定技能へ移行することができます。

特定技能業務区分  技能実習2号での職種    技能実習2号での作業 
漁業
(漁業技能測定試験)
漁船漁業かつお一本釣り漁業,延縄漁業,いか釣り
漁業,まき網漁業,ひき網漁業,さし網漁
業,定置網漁業,かに・えびかご漁業
養殖業
(漁業技能測定試験)
養殖業ほたてがい・まがき養殖

※他の職種で技能実習2号を終了し特定技能へ移行する場合

技能試験:合格が必要

日本語試験:免除

7、協議会への加入

初めて特定技能外国人を雇用する場合、「受入れから4カ月以内」に協議会への加入が必要です。

「問い合わせ先」
水産庁(こちら
相談窓口:03-6744-2340

加入方法 :加入申請書提出
加入費用: 不要(2022年4月現在)

まとめ

いかがでしたか?
漁業分野においては、まだまだ特定技能外国人を雇用する事業者も少なく、そもそも特定技能制度が認知されていない状況にあるようです。今後は、益々の受入れを期待したいものです
なお、漁業分野での注意する点ですが、これは受入後の問題で、

労働時間

が注意点となるでしょう。
漁船での労働では、変則的な勤務も多く、特に船内においては就労時間と休憩時間の区別をつけることも難しくあるかと考えられます。入管は受入前はもちろんですが、受けれ後もしっかりチェックしているため、労働法の遵守が求められます。一方で、末永く特定技能外国人に働いてもらうには、法令順守の上で業務に従事してもらうことが最善であると考えます。

特定技能外国人を雇用するにあたり、受入れる企業側にも

不法就労助長罪

という厳しい罰則が設けられており、「知らなかった」では済まされません。

あらゆる点に注意しながら慎重に雇用準備を進めていきましょう